トゲ

階下で叫び声がするので、はだしで犬の糞でもふんじゃったのかと、いちおう「だいじょーぶ?どしたのぉ?」と声をかけた。「とげが…!(そのあとにつづくのは子供に聞かせちゃいけない言葉)」
とげが刺さったぐらいで騒ぐなよ、と主人の指先をみると、何というのか、スーパーサイズ?アメリカンサイズ?マグナム?「とげ」という言葉は使えないような「木片」がつめの先から半月の先までぎっしりとささっている。ぎゃっ、これじゃあさわぐよな、と思ったが、一応落ち着いた声で、「わー、いたそうだね」「あたりまえ、みればわかるでしょ…」と最高に不機嫌な声。ま、あたりまえだ。
一日中不機嫌なのも困るし、ばい菌でもはいって「もっと早く手当をしていれば…」という事になっても困るので、病院に連絡をいれて、午後のアポイントメントをとった。
最初のショックと痛みは消えたものの、心臓といっしょにどきどきと、手をしたにおろすとたいへんいたいらしい。そうね、あの大きさのとげだから。
さて、午後になり、いざ病院へ。どうせアポイントメントがあっても待たされるんだから、とiPodを持って行こうとした主人、また不機嫌な言葉が。こういうときに限って、電池切れなのだ。ふっ、ついてないひとだね。
予想に反して待つ事も無く小部屋に案内された。アメリカのことだからちゃんと麻酔をかけて知らない間にすっきりと処置してくれさ。のはずだったが、30分ほどしても、出てくるのは主人より先に入ったひとたちばかり。あと5分も待ってでてこなかったら…とおもっていたころ、廊下のむこうから汗まみれ、ふらふらの主人の姿。麻酔なしでいきなり爪のあいだに何やら入れてひっぱりだしたらしい。とれたあとでドクターは「いやー、ラッキー!全部はとれないと思ってたよ」だと。あの主人の顔をみたら、どうだった?などときけなかったが、もうすこしで気絶しそうだったので途中で「タイム」したらしい。
そのあと、しっかり病人になってしまい、ベッドでテレビなど見てる。まったくー、私、二人目の子供の出産は「日帰り」っだったぞ。